こんにちは! ライターの磯田珠里です。
3月18日、合羽坂テラスにてこんなイベントが開催されました。

就職活動真っ只中の私は、自分の将来ばかり考えることに飽き飽きして、「これ幸い」とばかりに潜入してまいりました。
会場に到着したのは、イベント開催時刻のちょうど5分前。参加者がすでに何人か着席しているのが目に入りました。受付でお茶とパンを二つもらって、会場の後ろの隅の席におずおずと腰を下ろします。興味本位で来てみたけど、家族のことについて真剣に考えたことなど一度もない若輩者です。もらったパンを見つめ、こんなんで大丈夫かしら? と膨らむ不安をよそに、イベントは和やかなムードで開始されました。

まずは全員の自己紹介から
私も含めて十数人の参加者でしたが、肩書は多種多様。保険会社の営業の方だったり、映像業界の方だったり、教育関係の方だったり…。それぞれが参加した理由を語った中では、家族について考え直すことで、得たものを自分の仕事や生活に活かそうと考えている方が多い印象でした。
自分の家族を、他者に紹介する
次は、3人のグループになって「自分の家族を紹介する」というワークを行いました。持ち時間は、5分間。自分の家族の人柄や関係値、思い出やわだかまりなどを自由に話しました。
私は映像関係のお仕事をされているEさんと、編集者のKさんと同じグループに。Kさんとは面識がありましたが、Eさんとは初対面です。Eさん自身のこともよく知らないままに家族のことを聞くのは今までにない体験でしたが、自然とEさん自身についての理解も深まっていく感覚がありました。

「家族を語る」ということは、過ごした環境や家族の中でどういう影響を受けて育ったかを語ることでもあり、自分のことも語らざるを得なくなります。さらに、自己紹介では情報の取捨選択が可能ですが、家族紹介では嘘をついてもどうしようもないので、皆ありのままを語ります。自己紹介よりもその人をより純粋に、そしてよりパーソナルな部分で理解することに繋がるのかもしれません。
私自身にも「あ、私は父親のこういう部分に影響を受けたのかな」とか「もしかしたら自分が弟にこういう影響を与えているかもしれない…」という発見がありました。この家族に生まれたから今の自分があるのだな、と再認識しました。
団士郎さんの漫画を、みんなで読む
家族紹介を終え、次は、漫画家であり家族心理臨床家でもある団士郎さんの漫画を、参加者全員で輪読し、感想を共有するコーナーに入りました。物語は全部で3つでしたが、そのうちの2つをご紹介します。

物語①「迷惑」
「人に迷惑をかけること」についての物語です。人に迷惑をかけないことはもちろん正しい。でも実際、人は人に迷惑をかけてしまう生き物です。じゃあ、そんな中でいちばん望ましい人間関係って、一体何だろう? 物語の最後は「ほどほどの迷惑をお互いが被り合うのが、暖かい人間関係作りなのかもしれない」という言葉で締めくくられています。

読み終えた後で、感想を共有しました。議題に上がったのは、『自分が迷惑だと思うこと』と『他人が迷惑だと思うこと』の違い。「自分にとっては迷惑でもなんでもないのに、やたら気にする人がいて…」「でも迷惑だと思っていることを他人にしてしまったり、頼んだりすることの負い目や負担はすごくわかる…」「思いのすれ違いをなくすには話し合いが大事なのだと思うけれど…」
いざ話し合ってみれば、お互いが沈黙の間に感じていた気兼ねが全く不要なものであったり、意見を交換し合うことで新たな解決策が見つかることもあるということは、頭ではわかっている。ただ…
「その成功例あります?」「うーん…」×2
なかなか例を上げることができず。かくいう自分も面倒くさがって、なるべく人に頼らない道を選んだり、迷惑を被ってると思っても何となく我慢することが多いなと振り返りました。頭ではわかっていても、行動に移す勇気を持てない人は多いのかもしれません。
物語②「宿題」
最後は、著者・団士郎さんが大学で行っていた「人間コミュニケーション論」という授業のお話。授業の中で、士郎さんは【自分の関係世界における具体的な悩みを探して報告し、相手に助言を求める】というエクササイズを、学生に行わせていました。悩みを聞いた方は、それに何か一つ必ず具体的な提案をし、助言された側は、できるだけ実行してみるというもの。

そのエクササイズを、私たちもやってみよう!ということで、各々が近くにいた人とペアを組みました。さぁ、何を話そう。頭に浮かんだのは「妹」のことでした。
私は三人兄弟の長女で、4つ下の妹と7つ下の弟がいるのですが、妹とは幼少の頃から関係があまり上手くいっていませんでした。性格が真逆で、弟とは気が合ったこともあり、自然と生活の中で2対1の構造を取ってしまうことが多くなりました。気づいたときには、妹という人間がよく分からない。他人と一緒に住んでいる感覚です。
今まで誰にも打ち明けたことがなかった妹の話を、お相手のYさんはとても真摯に聞いてくださって、それだけで「あぁ、話してよかったな」と思いました。

妹との関係を再構築するには………。相手の女性が提案してくださったのは、「一緒にご飯を作ること」でした。自分の中には全くないアイデアで意表を突かれましたが、なるほどと思いました。共通の話題や趣味がなくても、共同作業をすることで自然と会話は発生するし、何より出来上がったものを一緒に食べられます。早速、帰省した時に実践しようと思います。
Yさんは、父親との関係について話してくれました。大学進学前までは仲が良かったが、家を離れると同時にぎくしゃくしてしまったそうです。私は話を聞くばかりで具体的なアドバイスができなかったのですが、「今度、父親と映画を見に行く」と約束してくれました。
イベントを終えて
家族を理解するということが、自分を理解することにも繋がること。他者と話し合うことは、自分だけでは及び得ない考えに達する可能性があることを、改めて学びました。
私は人前で話したり自分のことについて語ることを苦手としていたのですが、このイベントを通して自分をさらけ出して話し合うことの重要性を感じ、今後の人とのコミュニケーションにおいて頑張って取り組んでいきたいなと感じました。
今回、イベント参加者みんなで読んだ、団士郎さんの著作『家族の練習問題』は、こちらからいつでも購入可能です。

また夏頃にイベントを開催するようなので、今回参加できなかったみなさんもぜひ楽しみにお待ちください!
文:磯田珠里