ある朝、財布を出してみてびっくり。
紙幣が一枚も入っていないではないか。
前日に会社の近所のコンビニで、一万円札でちょっとした買い物をしていて、
そのお釣りの9千円が入っているはずなのに。
それで思い返してみると、いわれてみればどうもコンビニでお釣りのお札を受け取った記憶がない。
さては店員が渡しそびれて僕がもらいそびれたのではないか。
「そんなことがあったけど、まぁ9千円くらいたかがしれてるし別にいいかと思ってさーアハハー」と同僚の高岡みなみに話したら「そんな、もったいない!私が代わりに言ってきます」と彼女はそのコンビニに出かけて行った。
そしたら十数分後、もののみごとに、菓子折りと9千円を持ったコンビニの店長と一緒に彼女が帰ってきた。
僕にしてみれば一度はなかったことにしたお金だったので、なんだか9千円儲かったような気になり、
「お礼に半分あげる」と高岡さんに言った。
彼女は「おもしろ半分に交渉してみただけだからいらない」と言った。
しばらく押し問答してとりあえず千円だけもらってもらうことにした。
僕は残りの8千円を自分の財布に入れた。そしたら急にそのお金は自分のもののような気がしてきて、今更気が変わったから半分くれと言われてもあげないぞ!と思った。
僕は自分のことがとても怖くなって、とりあえず店長の持ってきたお菓子をほおばった。