オウンドメディアなどのコンテンツ制作をするとき、クラウドソーシングサービスを利用して原稿執筆を依頼した結果、「なんだかしっくりこない」ものが納品された経験はありませんか? そんな人たちに向けて、クラウドワーカーに依頼する際のポイントについて聞きました。教えてくれたのは、アソブロックの「編集部立ち上げ支援サービス」でコンサルタントを務める編集のプロ・安井さんです。
安井省人
アソブロック株式会社取締役/プロデューサー。2004年からアソブロックに参加。「環境理解からはじめるモノづくり」を主軸に、企業の組織・人事領域などをはじめ、あらゆるプロジェクトを担当。「本質的な課題解決に向き合うこと」「誰も喜ばない制作には関わらない」が信条。
“当たり障りのない記事”にしないために
──「クラウドワーカーに頼んでみたけれどしっくりくる記事があがってこない……」という声をよく聞きます。いったいどうしてなのでしょう?
クラウドソーシングは、場所にとらわれることなく仕事の依頼ができるとても便利なサービスです。「社内で記事を書き上げるのは時間や仕事量的に厳しいけれど、外部ライターとのつながりもないし……」という場合にまず利用してみる企業が多いのではないでしょうか。しかし、顔が見えない相手とのやりとりになるため、伝え方や進め方に普段よりも気を配る必要があります。クラウドワーカーとのコミュニケーションが不十分だと、結果的に「しっくりこない」記事になってしまう可能性がアップするんです。
──コミュニケーション不足から起きてしまう失敗パターンには、どんなケースがありますか?
たとえば、タイトルとキーワードだけ指定して「このテーマで書いてください」と、ざっくりとした指示しか出さなかった場合。当然といえば当然ですが、これだとイメージしていた内容からかけ離れた記事ができてしまう恐れがあります。たとえば、転職時に気をつけるべきポイントを具体的に伝える記事をつくりたかったとします。このとき、「転職について書いてください。“転職”“採用”というキーワードを記事内にそれぞれ◯回入れてください」という内容だけで発注すると、「転職サイトを活用しましょう」「各会社の採用情報をきちんとチェックしましょう」など、当たり前の情報しか書かれていない記事があがってきがちです。
──当たり前のことしか書かれていない記事をわざわざ読む人はそういないですもんね。だけど、嘘を言っているわけではないし、指示通り“転職”がテーマで、キーワードもちゃんと入っている。
そう、言われたことは一応守っているんです。クラウドワーカーの立場からすれば、指示が不十分だとどうしても個性を出すというより無難な及第点を狙いにいかざるを得ない。結果的に、「ネットで調べればすぐに出てくる情報をいかにコピペにならないようまとめるか……」みたいな記事のつくり方になってしまうわけです。
──それで、当たり障りのない情報ばかりの記事ができあがってしまうのですね。では、そうならないようにするためにはどんなふうにコミュニケーションをとればいいのでしょうか?
とにかく、記事のイメージを前もってきちんと伝えることです。どんな記事を、どんな人に、どんなトーンで伝えたいのか、できるだけ具体的に考えて伝える必要があります。記事の大まかな流れまで決めたうえで伝えられたらベストですね。
▼伝え方の例
<テーマ>
面接時の身だしなみについて
<ターゲット>
これから転職しようとしている20代女性
<記事の概要>
転職を考えている女性に向けて、面接時のメイクや髪型、服装のポイントを紹介したい。
<構成>
1. 導入
「これから転職活動を始める女性に向けて、メイクや服装のポイントを紹介します!」といった感じの導入。(200字程度)
2. 面接時の服装
スーツの場合、私服の場合の両パターンで、好ましい服装や避けるべき服装のポイントをいくつか紹介する。(500字程度)
3. 面接時のメイク
印象をアップさせるメイクのポイントや色使いについて紹介する。職種別に好まれる傾向の違いなどあればそれも紹介。(500字程度)
4. 面接時の髪型
印象をアップさせる髪型のポイントを紹介。まとめ髪にしたほうがいい長さや、前髪をどうするかなど。(500字程度)
5. まとめ
紹介した内容のまとめ。転職活動を始める人への応援メッセージで締める。(300字程度)
<その他参考事項>
・転職を考える女性に前向きな気持ちで読んで欲しいので、明るいトーンの「です、ます調」のテキストでお願いしたいです。
・明るい印象の記事にしたいので、「!」も適宜使っていただいて構いません。ただし、「♪」や「☆」などの記号は使用しないでください。
このように、記事の役割や構成をしっかりと考えるのに必要なのは“編集”視点の考え方です。言葉のニュアンスなどをチェックして、提出された原稿のクオリティを理想に近づけるのにも編集の視点が必要。つまり、きちんと伝わるコンテンツを制作するためには、ライターの能力以前に編集の力が重要なポイントになってくるんです。これは、クラウドワーカーに依頼する場合も、自分たちで書く場合も、外部のライターをアサインする場合でも言えることですね。
クラウドソーシングサービスを使う場合は、顔が見えないぶん、できるだけ細やかに「どうしてほしいのか」伝えることが大切。そして、細やかな指示をするためには、何を誰に向けて、何のために、どんなふうに情報を届けたいのかしっかりとイメージすることが必要になってきます。だけど、「これを伝えるには、そもそもどのやり方がベストなんだろう?」と、迷ってしまう人もいるはず。そんなときは、プロにノウハウを教わるのもひとつの手です。