「いま走りたくなるメディア」をコンセプトとしたランナー向けメディア「Spolete(スポリート)」を運営されているムラウチドットコムさま。アソブロックは編集支援から企画コンテンツ作成まで幅広くご支援させていただいています。今回、ムラウチドットコムさまにアソブロックとの仕事についての感想を伺いにインタビューさせていただきました。
ご協力いただいたご担当者さま
株式会社ムラウチドットコム Spolete編集部
清水孝祥さま(写真 右)
長岡雅之さま(写真 左)
(インタビュア:アソブロック 阿部俊介)
― 早速ですが、「Spolete(スポリート)」について教えてください。
清水さま:「Spolete」はランニングが好きな人、これからランニングを始める人を応援するWEBメディアです。
― ネット通販のムラウチドットコムさんが、どうしてオウンドメディアを?
清水さま:社内の新規事業として会社に提案をしたのがはじまりです。スポーツ商品のバイヤーをやっていたことや社内でブログメディア運営をやっていた経験を活かして、社内のリソースを使って新しい事業ができないかということで「Spolete」を会社に提案、承認がおりオウンドメディア運営がはじまりました。
― では当初は社内リソースだけで?
長岡さま:はい。でも、それが問題でした。ウチにはモノを売るプロ、商品のプロ、システムのプロはいました。でも、コンテンツの質を担保する表現のプロが欠けていました。そんな状況ではじまったので、情報発信する要素や素材はあるけれど、どう組み合わせてどう書いてどう伝えればいいのか、まったくわからなかったんです。
― それで外部パートナーを探し出すことになるわけですね。
清水さま:えぇ。ぼくらの「面白い」と読者の「面白い」が果たしてイコールなのかいまひとつ自信がもてなかったんです。メディアを使って何を達成すればいいのかというゴール設定もあいまいでした。なんとか知見やノウハウを外部から得られないかと、色々とリサーチしてオウンドメディア支援を謳う会社に相談することにしました。ただ、相談すると、返ってくる答えのほとんどが「SEO※をしたほうがいい」というものだったんです。
※SEO=Search Engine Optimization。検索エンジン最適化。対象のウェブサイトが検索エンジンの検索結果の上位に表示されるようにウェブサイトの構成などを工夫すること
― 立ち上げ当初ですから、SEOもたしかに重要ですよね。
長岡さま:間違っているとも思いませんでしたが、本当にそれだけいいのかなと。というのも、ちょうどメディアを立ち上げたその当時はまさに、著作権侵害やエビデンスの乏しい誤情報の発信などで大手キュレーションメディアが問題を起こしていた時期でもあったんです。PV数を稼ぐためのSEOは大事だとわかっているけれど、PVを追うだけじゃなくてコンテンツの質でファンを掴んでいくことを大事にすべきだろうという私たちの感覚と、相談したいろんな会社から返ってきた答えとが乖離していたんですね。そのため、パートナー選定はしっくりくる結論が出せずずっと課題でした。
― 「Spolete」の船出は、決して順風満帆ではなかったと。
清水さま:僕らも甘かったなと思ったのが、ブログの延長線上だとなかなか商業ベースには乗らないんです。ランニングに関わる商品知識もあるので、コンテンツを量産できるかなと最初は思っていたんです。でも、実際やってみるとコンテンツの質に疑問があって。読み物として成立していないんじゃないかというか。
― いけるという確信がもてなかった。
清水さま:指標がない状態で続けるのが怖くて。ゼロスタートの怖さがそこにあったんですね。
― そうしたなかで、どうしてアソブロックにご連絡いただいたのですか?
清水さま:最初にピンと来たのが、ホームページのキャッチコピーです。
― それはどんな?
清水さま:「社内に編集部をつくりませんか」というキャッチコピーです。「編集のノウハウを吸収して巣立っていってください」という姿勢に、プロ意識を感じたんですね。普通に考えたら、ノウハウを渡してしまうんじゃなくずっと取引を続けたほうが儲かるわけじゃないですか。ノウハウ提供以外のところで価値発揮できる自信があるんだろうなと、興味がわきました。
― 初めて会ったときの印象はいかがでしたか?
清水さま:すごく刺さったのが「営業がいて、エンジニアがいて、でも編集者がいませんよね」と自分たちが抱えていた課題をストレートにズバッと指摘されたことですね。アソブロックなら、僕らがもっていないところをバチっと補ってもらえそうだと思ったのが発注理由ですね。
― 実際にお仕事をはじめていかがでしたか?
長岡さま:まず良かったのが、オウンドメディアの「軸」をしっかり固めていただいていたことですね。読んで面白いという記事をつくりたいけれど、そこには一本筋の通った軸が必要だということを僕らはちゃんとわかっていなかった。何でもいいから面白いものというのではなく、しっかりとコンセプトが立てられたことが大きかったです。
― あれ、でもメディア立ち上げ時からコンセプトはありましたよね?
長岡さま:はい。「いま走りたくなるメディア」というコンセプトは実は最初からあったものです。ただ正直、掲げてはいたもののあんまり重要視していなかった。アソブロックさんと話を重ねるなかで、「コンテンツづくりの根幹は『走りたくなるメディア』じゃないですか」と言われて「確かに!」となって。基本的なことかもしれませんが、この指標があるからこそ、迷うことなくコンテンツが考えられるようになったし、迷ったときでも立ち返ることができます。
― 考える軸があるのとないのとでは、コンテンツの考えやすさも変わりますよね。
清水さま:おそらくですが、僕らだけだと読み物として面白ければなんでもいいかとなっていたかもしれませんね。アソブロックさんに協力してもらう前までは、2人でやっていたんですが、距離感が近いぶん、なぁなぁになることもきっと出てくる。そんなとき、外部の方が入ってくれるだけで客観的な意見をもらえるのも大きいですね。
― さらに伴走してみての感想は?
清水さま:アソブロックさんは一緒に悩んで、一緒につくってくれます。さきほどは外部の方という言い方をしましたが、社外だけど社内の人というか、仲間みたいなイメージです。みんなでコンテンツづくりをするときに大切な温度感の共有ができるのがいいですね。
― 温度感の共有?
清水さま:はい。そもそも「面白い」かどうかって、数値化しづらい部分です。 だから会議のなかでは温度感……あえて説明すれば、記事制作にかける熱意とか、物事を面白がれる好奇心の度合いかなと思うのですが、 そうした感性が共有できないと、コミュニケーションにズレがでてくるんです。もちろんPV数の追求も大事ですが、そうでない感性的な部分もすごく大事。アソブロックさんが言うなら、信じられる。そういう精神的な支えになってくれたのが大きかったですね。
― そこまで言っていだけると光栄です(笑)。ところでこれまでいくつものコンテンツを作ってきましたが、特にお気に入りの企画はなんですか?
清水さま:『ご褒美ラン』というシリーズです。走って燃焼したカロリーのぶんだけ、同じカロリーの好きなものを食べちゃえという企画なんですけど(笑)。記事のなかで走っている人も実際に楽しかっただろうなぁと想像できて、ちょっと笑えて。自分がメディアでやりたかったことはこれなんだって。無事公開できたとき、「今後もこういうのを続けたいです!」って全員にメールしたくらいです。当時、全体のコンテンツがある一定の方向ばかりに偏らないようにバランスをとることに気をとられ始めていて。肝心のコンテンツの品質を忘れかけていたので、あらためて立ち返ることもできた思い出深いコンテンツですね。
― それでは、オウンドメディア運営するなかで他に苦労した点はありましたか?
長岡さま:月10本のコンテンツをコンスタントにつくることですね。ゼロベースから始めたので、とにかく大変でした。シリーズ化もない状態だったので、こうすればなんとか軌道に乗るという状態になるまで半年以上かかりました。
― 軌道に乗っているなら、自社のみの運営も見えてきたのでしょうか?
清水さま:そうですね、いつかは自立したいのですが、どこかでアソブロックさんにはずっと関わってほしいという意識も同時にあります。メディアの方向性を見失いそうになったとき、見直してもらうとか。客観性を担保するうえでも、パートナーは必要なんだろうなと思っています。
― 見失いそうなときとは、たとえばどんなときでしょう?
清水さま:メディア運営がうまくいっているときですね。
― うまくいっているときのほうが危ないということですか?
清水さま:PV数も上がって、コンテンツもまわり始めたときに客観性を失いがちになると思っていて。勝って兜の緒を締めよじゃないですけれど、うまくいっているときこそ、見直す意識は大事です。社内だけではどうしても難しくて、外の目で、しかも同じ温度感を共有している人ってなると、やっぱりアソブロックさんなんですね。
― 今後、「Spolete」のめざすメディア像を教えてください。
清水さま:「Spolete」のファンになっていただいた方に、次はスポーツ商品を好きになってもらいたいと思っています。僕は長年スポーツ商品のバイヤーを担当しているのですが、宣伝される商品はやっぱり売れるんですね。でも、知名度がない中にも素晴らしい商品が世の中にはまだまだたくさんある。このもったいない現状をどうにかしたい。そんな思いから情報発信ができて、商品を知ってもらうきっかけになればと思い、「Spolete」を始めました。なので、情報発信しながら商品の発信もできる、メディアコマースのカタチをつくれればなと。その想いをより具体的に実現していきたいです。
― では、商品紹介ページもいつかは?
長岡さま:今は意図的にやっていません。商品に寄りすぎると広告っぽくなりそうなので。「Spolete」に出演している方って、一般市民ランナーなんです。一般市民ランナーは、一般の消費者でもあります。なので、一般市民ランナーを取り上げるコンテンツのなかで自然に商品を使ってもらって、ありのままの感想とか使用感を伝えたほうが、見ている人にも商品に対する共感を得られるかなと思っています。メーカーが憧れを演出するブランディングをするならば、「Spolete」はリアルな共感をつくるメディアでありたいんです。
― アソブロックに今後期待することはありますか?
清水さま:メディアコマースというカタチを進めていくなかで、ファンをつくることが大事だと思っているので、マンネリ化せずにいろんなことにチャレンジしていけるパートナーでいてほしいです。忌憚なく「これはダメ」「これは面白くない」と言ってくださって結構です(笑)。編集スクールじゃないですけれど、学校みたいな意識もあって。大事にすべきは読者側の立ち場だと思うし、それを忘れたくないので、指摘され続けたいですね。
― アソブロックは、そんなに手厳しいですか…?
清水さま:いえいえ、いつも編集会議は楽しくやれています。今月1回ですが、数回でもやりたいくらいですから(笑)。毎回学ぶことも多いですし、ブレストしないと出てこないアイデアもありますから。
― それでは最後に、せっかくなので告知がありましたら。
長岡さま:「Spolete」への出演など、協力してくださるアンバサダーを募集中です。選考があるので、みなさんのご要望にお応えするのはなかなか難しいのですが、被写体としての出演以外にも、レポートのライティングなどもあるので、ぜひお気軽にお問い合わせいただければと。
アソブロックさんも含めて、いろんな方に関わっていただいて、みなさん「自分も走ろうかな」と言ってくれるのが嬉しくて。走ることを好きになってもらうのは、僕らが求めていることですから、これもファンづくりの一環になっているのかなと思っています。
― 以上になります。ありがとうございました。
清水さま:はい、ありがとうございました。