2024年9月、アソブロックでは日本仕事百貨で求人を出しました。
応募くださった方は、40名。
面談担当となった戸村(10月入社)と熊谷(4月入社)は話し合って、全員と会い、話をすることにしました。理由は「採用面談自体を互いの成長機会にできないだろうか?」と考えたから。
以下は、それぞれが20名ずつと話し、感じたことの記録です。
熊谷のばあい
◯月×日
怒涛の面談週間が始まった。1つめの目標は、互いにとって良い時間にすること。2つめは、面談時間を1時間に収めること。わたしは話しすぎたり、聞きすぎたりするが、あんまりよくないなという内省から。3つめは、このあと関係性がつづかなかったとしても、そのひとの腹のなかに、次にすすむ力があるという状態をつくること。こんなことができるのかはわからないけど、そうであってほしいから。
◯月×日
今日お会いしたふたりには「あー、楽しかった」と言われたので、ひとつめはクリアできたかな?と思う。1時間で行けるところなど、たかが知れている。でも、できるだけ、が、少しくらいできているといい。
◯月×日
今日は「大人も変わらないのよ」「熊谷さんは夢があるね」と言われ、悲しかった。わたしは、ひとにもっと厳しくなろう。そのぶん、自分にも厳しくなろうと思った。この間、Mさんに「言ってあげるのは愛なんやで」と言われた。積極的に、いやなヤツになるのを目標に据える。
◯月×日
「このひとは、不採用だろう」と思うのは、気持ちのいいことではない。
わたしには「このひとは仕事ができるだろう」と見破る力はない。ほとんどやったことがないから。個人の好みと、客観的判断との境目が難しい。「ここじゃなくても、あなたは大丈夫じゃないか」と思うこともある。わたしの偏りによって、ひとの人生を左右するのが怖い。
「このひとがここにいる/いない」を規定する覚悟が、たぶん足りていない。何にも頼らず、静かに腹を括っていくことが必要である。
◯月×日
採用しなかった場合、わたしとそのひとの関わりは、なんだったのだろう。ひとがふたり出会って、関係がつづいていかない。40人からの応募が来ていて、全員といま一緒に活動するのは無理。だからそういう瞬間ばかりを迎えていく。そのときに、わたしができることはなんだろう。
不採用は、後生の別れじゃない。採用のほうを、よっぽど重く考えなきゃいけないというのは、この数か月でよく学んでいることだ。採用ではない関わり方もあるはず。その形も、模索してみたい。
◯月×日
ひとと生きていくには、編集者として生きていくには、仕事を自分で作れないといけない。今日の面談をしながら、そう強く思った。
「この子は絶対にライターだろう」と思うひとに、いま、わたしは何も仕事が渡せなかった。とても問題で、悔しいことだ。そういえば、社長は「出会ったひとと、まず一回は仕事してみるのがポリシー」だと、数年ぶりに再会したカフェで言っていた。そういう自分でいることが、ひとを育てるには必須条件だ、ということなんじゃないか。
いつまでも、ひとのお金でしか仕事ができないのは嫌だ。ヒントはたぶん、周りにたくさんある。
戸村のばあい
まるで波のない静かな海に浮かぶ船に乗り、
行き先だけを告げられて「さぁ、いってこい!」と背中を押される。
今日までのアソブロックでの仕事は、そんな仕事が多い。
船を漕ぐオールがなければ、森に入って材料になりそうな木を探す。
モーターがあった方が良さそうなら、街へ行って詳しそうな人に教えてもらう。
目的に辿り着くため、必要なことを考え、探し、手を動かす。
そんなサバイバル能力を求められることが多い気がする。
この人は、海に放り出されても、船を自分で漕いで進むことができるだろうか。そんな問いを持って、面談に臨んでいた。
この人は、これまで何をしてきたのか。
何に興味があるのだろうか。
すぐに使える「オール」は何なのか。
面談をしながら、ふと気づく。
この問いは、実は自分にも向けられている。
自分はどうだろう?
自分は、これまで何をしてきたのだろう。
何に興味があったんだろう。
すぐに使える「オール」は何なのだろう。
人と話せば話すほど、新しい刺激を受け、学びがある。
その度に、自分を見つめ直す時間が生まれる。
*
漕ぐ力を鍛えることがゴールじゃない。
ということも、この面談を通して気づいた。
「いいと思った相手に、自分が渡せる仕事がないことが悔しい」
と、同僚のくまちゃんは反省していた。
自分の遥か先を行く同僚の考え方に、わたしの目玉は飛び出した。
いつか団さんの右腕になれれば十分だと思っていたからだ。
目的地に向かって船を漕ぐだけでなく、
自分で船を作って、自分で目的地を決めて、出航することができる人にならないといけない。
団さんのアシスタント業務をこなすことがゴールではないのだった。
わたしは、どんな船で、どこに行きたいんだろう。
答えはまだ見つかっていない。
けれど、「考えなきゃいけない」と気づけたことは、前進だと思う。
今回ご縁が結べなかった人たちのことも、いつか自分の船に誘えるくらいに成長したい。
自分の船を作り、漕ぎ出し、行き先を決める人になる。
わたしの航海はこれからはじまる。
*
そういえば、実は今回の面談を担当することは一度断っていた。
だって、わたしが入社してまだ2週間しか経っていなかったから。
「入社して間もない自分が面談するなんて、失礼じゃないですか?」
そう言ってみたけど、返ってきたのはこんな言葉だった。
「アソブロックのことが勉強できるよ」
「充実した時間をつくるのも、勉強だよ」
そうして、また海に放り出された。