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難関取材先を口説く取材交渉のコツとは?│編集者・林洋平に聞く

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演劇人であり編集者であるアソブロック・林洋平氏へのインタビュー企画。今回は編集者としての側面にフォーカスを当て、「取材交渉の名手」としても知られる同氏に取材の交渉を成功に導く具体的なテクニックを聞いてみた。

聞き手:魁生 佳余子(フリーライター)

 

まずは自分の心を開いて想いを伝える

―ズバリ、難関取材先から取材の許可をもらうコツとはなんでしょう?

:そうですね。ひとことでは難しいですが、まず最初は、自分の中身を開いて見せることが大事だと思います。取材をしたいのはこちらの都合ですからあくまでも丁寧に、でも”媚びる”のではなく、 下心的な部分も含めて素直にこちらの「想い」と制作の目的を伝え、取材にどのような意味があるのかをわかってもらおうと心がけています。

 

―林さんのいう「想い」にはどのような視点が込められているのでしょう。

:やはりコンテンツの先にいる人たちのことを真っ先に考えることが多いですね。見る人たちがどう受け取るのか、どんな感想を抱くのかということを常に考えているので、取材を頼まれるほうとしても完成系のイメージが湧きやすいのかなと。

 

取材交渉はデジタル/アナログを組み合わせるべし

―これまで、難関取材先にこうしたアプローチで受け入れてもらえたという例があったら教えてください。

:たとえば、次のノーベル賞候補ともいわれる高名な大学教授に取材を申し込んだことがありました。その教授が立ち上げたベンチャー企業の広報担当者にコンタクトを取ったのですが、最初は反応は芳しくありませんでした。それでも、メールの依頼文に私の姿勢や想いを盛り込んだ上で、諦めずしつこいくらい電話でも追いかけました。すると、担当者から「いつもなら断るところですが、わかりました」と返事をいただいて教授につないでもらい無事取材にこぎつけることができたんです。

 

―何が決め手だったのでしょう?

:やっぱりまずは、企画の切り口にオリジナリティがあるかですかね。その教授は既に過去さまざまな媒体でインタビューに答えていたので、広報の担当者さんも普段なら「それらの記事を読んでください」とメディアをあしらうことが多かったそうです。でも過去記事の多くは、教授の研究成果に関するものと創業の経緯に関わるものがほとんどで、あるとき読んでいてふと「教授はどういう子どもだったのだろう? どうして研究者を志すようになったのだろう?」という疑問がわいたんですよ。そこで、幼少時代からのライフヒストリーを振り返っていただくという切り口で取材をしたいとアプローチしたところ、「これまでになかった内容」と喜んで受け入れていただけたみたいです。

 

― なるほど、まずは企画のエッジを効かせるということですね。それ以外に、メールと電話の合わせ技でアプローチしているところもポイントのように感じました。

:まさにそれもあると思います。デジタルとアナログのアプローチを組み合わせることはコツのひとつですね。メールできちんと企画書を送ることで、企画の概要やイメージは伝わりやすいですし、検討の際、 広報窓口の方が相手方の内部で共有しやすくなります。たいてい取材の可否はひとりで判断するものではないですから。

さらにそこに電話も組み合わせることで、より熱意を伝えることできますし、安心感ももってもらいやすいように感じます。「怪しい媒体なんじゃないか?」「取材にかこつけた営業なんじゃないか?」 といった懸念は、受け手としては当然抱くと思うんです(笑)。電話で声を聴いてもらうことでそれらを払しょくできるのは、少なからずあると思いますね。

 

― 他にも何か交渉にあたって大切にしていることなどはありますか?

:すべてを自分のペースでは進めないようにしています。電話をするにしても時間帯を考えますし、公開スケジュールばかり気にして無理強いをしてしまうと、断られるかもしれません。先ほどの教授の例も企業担当者がとてもお忙しい方だったんですが、そうしたことへの細かな配慮が活きてOK してもらえた部分もあるかもしれません。そして相手側に最大限に配慮をする一方で、自分がやりたいことをはっきり伝えることも大事です。さらにいうと、打ち合わせや取材の場も、相手の大事な時間を割いていただくものなので、せっかくの時間のなかで相手方にも何かひとつでも得るものがあったと思ってもらえるように考えて話すのは心がけています。

 

―お話を伺っていると、取材を成功に導くには、真摯で熱い姿勢が大事なんだと納得できました。

:私がかかわっている演劇と編集に共通する要素ですが、観客や読者といった、生み出すコンテンツの先にいる受け手のことを考え、想像し、シンプルに想いを伝える。そのベースを意識することで、取材交渉においても理解はもらいやすいし、最終的に良いコンテンツにもつながっていくと思っています。

 


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