CATEGORY

プロ編集者のオウンドメディア記事企画術。「ゴールから」「楽なことから」考えよう。

  • Facebook 記事をシェア
  • Twitter 記事をツイート
  • LINEで送る

商品よりも人をアピールする“オウンドメディア2.0”を提案する編集者・阿部俊介。50社以上のマーケティングを手がけてきた彼の企画・編集術を聞きました。

聞き手:SAKURA(フリーライター)

アソブロックのマーケティング担当でもあり、常時約50社の企業のマーケティング支援やコンテンツ制作支援を手がけてもいる編集者・阿部俊介。

 

記事企画のコツは「ゴール」をぶらさないこと

―オウンドメディアの記事コンテンツを企画するときのコツやメソッドを教えてください。

阿部:「ゴール」から考えてつくることがコツかなと思っています。オウンドメディアの記事ってついつい「ユーザーはどういうキーワードで検索するのかな?」という入口のほうから考えてしまいがちだけれど、実は重要なのは、ゴールをぶらさないようにすることなんです。簡単に企画術のフレームワークを可視化すると、こうですね。一番右の「売りモノ」がゴールにあたります。

オウンドメディアの記事企画のフレームワーク。

弊社自身の例でいえば、たとえばアソブロックにはオウンドメディアの立ち上げから自走までを伴走サポートする「編集部立ち上げ支援」という企業向けサービスがあります。これを「売りモノ」と考えると「オファー」にあたるのは、資料請求や問い合わせ、もしくは無料診断や資料ダウンロードなどです。「オファー」とは見込客の個人情報を獲得するために引き換えに提示するコンテンツのことですが、記事をつくるときに「オファーを何にするか?」という部分は意外と抜けがちでありながら、実は一番といってもいいくらい重要なところです。どれだけその記事がPVを稼いでも、オファーが抜けていてコンバージョンにつながらなければ、1円も生まないわけですから。

 

―ゴールから考えるということは、まず「ゴール」を定めて、次に「オファー」といった具合に、フレームワークを右から順に埋めていけばいいということですか?

阿部:いや、そこらへんは結構柔軟でよくて、むしろ「ゴール」を決めたら次はいちばん左の「ユーザーインサイト」を考えるといいかなと思います。おススメの進め方は、フレームでいうと5→1→2→4→3の順です。

先ほどの「編集部立ち上げ支援サービス」の例でいえば、そのサービスを売るというゴールを決めたら、次にユーザーインサイト、つまり「潜在顧客はどんなことを求めているか?」を考えます。たとえば「オウンドメディアの作り方がわからない」とか「更新が続かないんだ」とか、「社内報を自分たちで作れるようになりたいんだ」とか、いろんな悩みや理想があるはずですよね。思いつくだけの悩みや理想を、フレームワークの一番左の「ユーザーインサイト」に入れていきます。

それから、実際にユーザーがそれらの悩みの解決策をインターネットで探すとしたらどんなキーワードを入力するかをシミュレーションして「想定検索ワード」を埋めます。すると、その検索ワードを連結して短い文章に整えるだけでも、ひとつの記事タイトルができあがります。

フレームワークの実践例。実際に生まれた記事がこちらこちら

 

―システマチックでわかりやすい……!

阿部:ただここで忘れちゃいけないのは、ユーザーインサイトからゴールまでがしっかり一本の線でつながっていることです。そうでないと、せっかくの有益なコンテンツでも成果にはつながらず「読んで満足」で終わってしまいます。

そこで先ほども言った通り「オファー」が大事なんです。 想定キーワードを洗い出したら、その受け皿となる「オファー」を考えるということは欠かせません。 なんなら記事コンテンツをすっとばしてオファー専用のランディングページを用意するだけでも、必要最低限の機能は果たされます。5→1→2→4→3 に囚われすぎず、既にダウンロードさせたいコンテンツが決まっているとかキャンペーンに誘導するとか、オファーが明確に決まっているようなら、 オファーを先に埋めてから考え始めてももちろんかまいません。

 

―そんな風に柔軟にとらえると、気軽にチャレンジできる気がしますね。そもそも、このフレームワークはどうやって生まれたんですか?

阿部:最初からフレームを作ろうと思っていたわけではないんですけど、なにも考えずに進めると、やっぱり最初はユーザーインサイトから考えちゃうじゃないですか。でも、そうすると問い合わせが一件も来なかったりして、やっぱりゴールから考えていかないとうまくいかないなと気づいたんですよね。月間100万PVのオウンドメディアをつくるのもすごいけれど、特に私が携わることの多いBtoBの領域では実際に求められるのは、たとえ月間1,000PVでも毎月1件きっちり受注するオウンドメディアなんです。受注が伴わないと、そもそもメディアを維持するだけの意欲も体制も続かないですし。もちろん、広く認知を得るための雑学コンテンツをつくったりするのもいいんですけれど、まずはゴールに直結する「受注に近い」コンテンツを届けることのほうが優先です。そのことを仕組み的に忘れないようにするために、必然的にこのフレームが生まれたという感じですね。

 

楽だけど成果につながるネタは意外と埋もれている

―阿部さんは日ごろ、どんなインプットをしてるんですか?

阿部:仕事の中でフィールドワークのように学ぶことが多いですね。 50社以上のマーケティング担当者と日々接しているので、それだけでもさまざまな企業の事例を見られる。「世の流れはこうで、この業種にはこういう課題が多いんだな」みたいなネタをリアルタイムで採集しつつ、アソブロックの仕事も含めてさまざまな施策を打つことで、いろんな試行錯誤ができています。

 

―そのインプットは、どういう企画に活きているんでしょう。

阿部:いい意味で「オーソドックスな企画」の引き出しが増えたとは思いますね。検索者がほしい情報と、発信者が届けたい情報を的確に整理してつなぐだけで、意外と「あ、確かにそれはまだやっていなかったね」という企画は出てきます。「面白いものをつくろう」と気負いすぎる必要はないんですよ。 尖った面白さを足すのは、あくまで味付けなので、そこから遊ぼうと思えばいかようにも遊べます。まずはシンプルに、成果が上がりやすくて気軽にやれること、楽なことからはじめればいいと思います。

 

―楽なことから? 意外です。

阿部:たとえば、オウンドメディアの記事の話とはすこし違うけれど、何年か前、あるフィルムメーカーさんのWebサイトに「サンプル請求フォーム」の設置を提案したことがあったんです。そうしたら、それだけで月20件くらい問い合わせが増えました。しばらく経ってその波が落ち着いたとき、今度は請求できるフィルムの種類をひとつだけ増やして、そのことをお知らせする案内メールを送ったら、また10数件の新しい問い合わせが入りました。フォームの選択肢をひとつ増やしてメールを打っただけなので、施策のコストはほぼゼロ(笑)。めちゃくちゃ簡単だけど、きちんと効果が出る施策って、案外そこらじゅうに眠っているんだと思います。だけど当事者は見落としてしまいがちだから、そこを整理して気づかせてあげるのは、編集者としての自分の役割のひとつですね。

おすすめの関連記事