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第59回 8月18日(土) 会場:両国KFC Hall & Rooms




第59回 8月18日(土) 会場:両国KFC Hall & Rooms

第59回目の家族理解ワークショップは22名の方にご参加いただき開催しました。 その様子をレポートします。

【オープニングトーク&セッション1】

オープニングトークは、毎回扱う題材を変えながら、このワークショップで学ぶあらゆることの基礎となる、家族システム論について話があります。

ワークショップには、児童相談に関わる人、ケアマネ、医療関係者、学校や幼稚園保育園の先生、法曹関係者、カウンセラーなどあらゆる年代の「人に対してサービスを行う人(対人援助サービスと総称)」を中心に、一般家庭のお母さんやお父さん、将来対人援助職への就業を考える大学生まで色々な人が集いますが、そこで共通に役立つ考え方として学んでいるのが、「家族システムへの介入による解法」です。

「家族システムへの介入による解法」とは、問題とされる個人の内面に焦点を当てるのではなく、個人の持つ関係性、中でも家族という万人が共通で持つ関係性に焦点を当て問題解決を図ろうという考え方です。言い変えると「部分はいつも全体の中にある」と考え、全体(家族の関係性)に変化を与えることで部分(問題とされている事象)を解決に導こうとすることです。

例えば不登校の問題解決を検討する際に、不登校児の心の在り様に焦点を当てるのではなく、不登校児の家族の関係性に焦点をあて、その関係性に変化や刺激を与えることで、結果的に不登校状態が続かない状況をつくっていこうとします。

講師は、繰り返しこう言います。 「大事なのは原因を究明することではなく、課題解決に向けた具体的な作戦を授けること。 家族という集団には、解決に向かう力必ずあると信じること。 専門細分化が進むと、援助者自身も全体が見る力が弱まり、結果的に問題解決力が弱まることがある。 専門性は、家族理解(全体を見る力)の上にあるものに過ぎないと自制すること」

対人援助職者は、初対面の際に、まずは相手に 「そんな風に私(たち家族)を見てくれている人がいると思うと、少しは頑張れる気がします」 と思ってもらうことが大切です。 そんな信頼性の獲得に向けた具体的な行動が、家族理解です。

今回講師が題材に取り上げたのは、講師自身が編集長をつとめる「対人援助学マガジン」についてでした。対人援助学マガジンはWEBで展開されている季刊誌で、現在33号が最新号です。50名余りの対人援助実務者がそれぞれテーマを持って連載していますが、講師はこのマガジンを「今、私たちの社会で起こっている対人援助領域の百科事典だ」と言います。34号から連載が始まるいくつかの興味深いテーマが語られました。

本誌に興味のある方はこちらからご覧ください。
http://www.humanservices.jp/magazine/index.html

その後、「相談の記憶」という講師の描く漫画エッセーを全員で見ながら、先行きの不透明な今日社会において、それぞれが自分の仕事を定義することの大切さについて話がありました。参加者の周りでも、毎日様々な問題や課題が起き、様々な相談が持ち込まれます。そんな毎日の中で変わらないこと、それは

・騒ぐのは当事者
・何かあったらどうする!と叫ぶのは未熟な関係者

だと講師は言います。対人援助のプロとしては、ここから距離を置き常に冷静に対処できる力を持ちたい。そのためのベースになるのが、自分の仕事を自分で定義しておくことだと言いました。



【セッション2】

セッション2は恒例で「参加者の3分間トーク」を行います。

普段の人付き合いが、職場の同僚を中心にどうしても固定化してしまう傾向がある中で、同じヒューマンサービスの職に携わりながらも、対峙する相手や取り扱う問題がまったく違う人と輪になり「最近私の周りでは…」とお互いに報告します。今回は6人1組で行いましたが、それはつまり、近接領域で今起こっているいくつもの話が同時に聞けるということです。

学校や病院や介護の現場、家庭や学生たちの間で起こっている問題。それぞれは個別的でも、同じ社会を構成する人に起こっている問題であることに変わりありません。そして、それぞれが本当にまったく無関係かというと、実はそうでもないことが多いのです。

幼稚園で起こっている問題が、形を変えて高齢者の現場で起こっていることがあります。保護観察所の中で起こっていることが、そのまま現代の家族に置き換えられる出来事だったりもします。それらを聞きながら、整理し、改めて自分の現場や家庭で役立ててもらおうというのが、このセッションの目的です。

3分の話を聞いた後は、それをネタに7分間、メンバーでディスカッションします。すると、そこで起きている問題や課題がより明確化したり、あるいはメンバーの意見を聞くことで、発表者が事実をこれまでと違う視点から見られるようになったりします。参加前は「この3分間トークが不安で…」とおっしゃる方も時々いらっしゃるのですが、実際にやってみると、なんてことはない職場や家庭での雑談を、普段とは違うメンバーで行う感じで楽しいのですよ。

今回私が参加したグループで興味深くディスカッションしたのは、中学校の養護教諭が話した「夏休みの部活問題」でした。猛暑が続き、高校野球も児童虐待ではないかという声もある中、夏休みの部活も国や県、市の方針で大きく制限がされた地域もあったそうです。しかし、一方でこの養護教諭が話したのは「恵まれない家庭環境下にある子どもたちにおいて、夏の部活は居場所でありセフティネットであることもある」という視点からの話でした。



【セッション3】

セッション3は、こちらも恒例の「ジェノグラム面接」の演習でした。

ちなみにジェノグラムとは家族関係を図示するものですが、このワークショップで繰り返し学ぶ技術です。この技術を学び・使い・経験を積み重ねることで、

・ジェノグラムを見て、家族関係のバランス・アンバランスを感じ取ることができる
・バランス、アンバランスから具体的な援助プランを考えることができる

というメリットがあります。対人援助職者が携わる多くの問題は、「家族」というステージの上で起きています。不登校も、DV問題も、離婚問題も、養育放棄も、介護問題も、その多くに共通するステージとして、家族があります。そのため、援助の第一歩はまずステージの状況を正しくアセスメントすること、つまり家族の構造を理解することです。

実際のアセスメントはヒアリング(インタビュー)を通じてジェノグラムを描きながら行うのですが、その際にポイントになるのが、「境界・サブシステム・パワー」という三つの要素およびその機能状況です。例えば「パワー」とは家族の中で決めごとをするときに「誰が」「どのように」行っているかという決定のプロセスのことを指します。

問題があるとされる家族においては、それら三つのファクターの何かが「一般的ではない」ことが多く、アセスメントにおいてはそれを「家族の特徴」と見なします。そして、その特徴が問題とされる事項になんらかの影響を与えていることが多いのです。

例えば、本来であれば夫婦で話し合って決めるべきことを上世代が決めてしまっているようなケース。子どもが行く小学校を、跡取り問題に紐づけておじいちゃんが決めました、などは一般的ではありません。それで上手く行っていれば何の問題もないのですが、仮にその経緯を踏まえて小学校に通っていた子どもが不登校になってしまったような場合は、不登校問題のように見えて、実はそうではないのかもしれません。

当事者にとっては「当たり前」になってしまっている「家族の特徴」を「一般的なそれ」に戻すことで家族というステージを整える。その結果、問題が解決に導かれることも案外多い。ざっくり言えば、これが「家族システムへの介入による解法」です。

今回は、参加者それぞれが「身近な誰か」になりきって面接を受けました。例えば自分が受け持っているケースの主訴になってみたり、あるいはちょっと気になる友人になってみたり。「当事者の気持ちになってみよう」とはよく聞くセリフですが、実際に当事者になりきって面接を受け、質問に答えることで、よく知っていることと全然知らないことの情報(理解)格差に気付くことができたり、より本人の目線に近い気分で状況把握ができたりします。



【セッション4】

セッション4は「事例検討」でした。 「事例検討」は講師が実際に担当、あるいは見聞きしたケースについて、その処遇をみんなで話し合うプログラムです。

場に出されるケースは、相談が進行中のケースも多いため、詳細は伏せますが板書された情報(ジェノグラム)を見ながら、最初は一人で、次にグループになり、この家族は「どんな家族なのか」さらに、「どんな具体的援助ができるか」のアイデアを出し合います。

それぞれのグループで出たアイデアは、場に出され、共有され、さらなる意見交換を積み重ねながら各人に蓄積されていきます。 最後に講師が「私はこう考えます(考えました)」ということを話すのですが、もちろんそれが正解なわけではありません。

あらゆるアイデアは可能性に満ちています。 援助者として大切なのは、たくさんのアイデアを出し、具体的な変化を来談者(や自分の家族)にもたらしてあげることです。 人を援助する方法に「法則」や「シナリオ」はありません。 100のケースに100の解法があることは、誰もが感じていることだと思います。

だからこそ、こういう場で事例検討を通じて「いつもの私では思いつかないような」アイデアに触れ、蓄積していくことに意味があります。

事例検討で話し合われているのは、「起こったこと」ではなく「起きそうなこと」。 私たちは、いざとなると「起こったこと」に集中して議論してしまう傾向がありますが、ここでは「起こっても不思議ではなかったこと」を中心に話します。

起こってもよかったことが起きなかった要因は、単に「運がよかった」だけなのか? それだけでもないのではないか? 実は、起こらないように何か工夫されていたことがあるのではないか?

野球のイチローがケガをしないのは、単に「運がいい」だけではないことは、誰もが知っていますが、家族においても「起こってもよかったことが起こらない」背景に、秘められた何かがあるのではないか? そのことを考えるのは十分価値があると捉えて取り組むのが、事例検討のひとつの意味だと思います。

そんなこんなで、あっという間の6時間。 今回も納得と笑いが絶えないワークショップでした。

さて、次回は、11月10日土曜日に開催します。 会場は各線品川駅に直結する品川インターシティの会議室です。 遠方から新幹線や飛行機で来られる方にもアクセスはいいと思います。 専門職の方から、お母さん・お父さんまで、次回もたくさんの方のご参加を、お待ちしております。

※文中に出てくるケースや実例の内容等は、実際の講義と一部変更している場合があります

文責/団遊

【今回の参加者の所属(職業)】 介護支援センター、NPO法人、大学教員、社会福祉協議会、福祉事務所、地域包括支援センター、幼稚園園長、児童発達支援事業所、小学校教師、家庭児童相談室、こども女性相談センター、保護観察所、主婦、保育士、養護教諭、高校教師、児童相談所、療育センター、有料老人ホーム

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